AI・ドローンを駆使する「モザイク戦」への日本の対応
=日本危機管理学会が第2回安全保障研究部会=

 当学会は2021年12月19日、安全保障研究部会(部会長・下平拓哉常任理事、事業構想大学院大学教授)の2021年度第2回会合をオンライン形式で開いた。下平氏が「新領域における新たな戦い方」をテーマに講演し、米軍などで導入が進む人工知能(AI)やドローンを駆使する「モザイク戦」について詳しく解説した。

下平拓哉氏の講演テーマ「新領域における新たな戦い方」
(提供)下平拓哉氏

 下平氏はまず、モザイク戦を定義。従来の「陸海空」に加え、宇宙やサイバー空間も含めた「すべての領域」において、既存の軍事的能力と新たな低コストの無人システムを組み合わせながら、より効果を高めるために戦術的、作戦的、そして戦域的な「効果的ウェブ(effects webs)」を構築することだと説明した。

 また、モザイク戦は人間の指揮と、機械のコントロールによって分散した兵力を迅速に構成・再構成することを通じ、軍の適応性を高めた上で、敵に複雑性と不確実性を課すものだと強調した。こうした戦い方は米軍のほか、中国やロシアなども研究を進めているという。

 特に米国では、空軍と海軍の共同で軍事作戦構想(エアシー・バトル=Air-Sea Battle)を戦略予算評価センター(CSBA)が2010年に発表。さらに翌年には国防総省にASB室、2015年には総合参謀本部にJ-7(Air-Sea Battle)がそれぞれ設置され、すべての兵力が協力しながらモザイク戦の戦略を練っているという。

 その上で、下平氏は日本に求められる対応を提言した。具体的には日本単独だけでなく、日米、日米豪印のクアッド、そして、英国や欧州連合(EU)、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国などとの多国間の枠組みにおいて、必要な時に必要な場所・兵力で非対称戦(=敵が予想外の手段で挑んでくる戦争)を構成できるシステムづくりが必要だと指摘した。

 講演後の質疑応答では、「AIが判断を下しても、意思決定の遅い日本はどこまで適応できるのか」「中国が日本にモザイク戦を仕掛けてきた場合、どう対応するのか」といった質問が相次ぎ、活発な討議が行われた。

 下平氏は前者については、シミュレーションを徹底的に行い、どこまでAIの判断に適応できるかを平時から模索しておく必要があると強調した。また後者に関しては、最新の戦い方に付いていけるようにする必要性を指摘。そのためには日本も米国のように、民間シンクタンクが強力な政策提言を行う必要があるのではないかと述べた。

「新領域における新たな戦い方」について講演中の下平拓哉氏

【芳賀裕理】