米中新冷戦、日本企業はどう対応すべきか
=日本危機管理学会が第2回企業危機管理部会=

 日本危機管理学会は2021年3月27日 企業危機管理究部会(部会長・大森朝日理事)の2020年度第2回会合をリモート開催し、日本危機管理学会の原田泉会長(国際社会経済研究所上席研究員)が「米中新冷戦下の企業危機管理」について講演した。覇権を維持したい米国と、それに挑戦する中国。両国が新冷戦を繰り広げる中、その狭間にある日本企業はどのような危機管理体制を構築すべきなのか。最適解が容易には見つからない難題だけに、いつにも増して議論が白熱した。

(提供)原田泉氏

 原田氏はまず、新冷戦の現状について①民主主義国家(米国)と権威主義国家(中国)の特徴②社会監視に対する米国と中国の違い③戦後の米中関係の経緯―の順に解説した。現下の米中対立は、中国の台頭によって生じた地政学的な競争と、「第4次産業革命」をめぐる主導権争いが同時に起きているとも言え、「単なる貿易摩擦の域を超えている」と主張。このため、米国はじめ各国が「経済安全保障」を重視する姿勢を強めていると指摘した。

 その上で原田氏は、米中双方との貿易に依存する日本は、両国の経済安全保障の政策意図を十分理解し、企業はそれに対応した事業計画を立てるべきだと主張した。具体的には、企業は米中2極化のさらなる進行に備え、企業の経済インテリジェンス部門として経済安全保障を担当する専門部署を設けるよう提案した。

 講演後の質疑応答では、「LINEの情報管理問題についてどのように考えるか」「なぜ日本では企業の危機管理の強化がなかなか進まないのか」など質問が相次いだ。原田氏は前者について「大きな話題になっているが、他国にデータセンターを置くこと自体問題がある」と述べ、セキュリティ意識と具体的対策を強化する必要性を強調。また後者に関しては、危機管理を習得させる教育システムが整っていないなどと指摘した。

【芳賀裕理】