日本のエネルギー課題とその変革を議論
=日本危機管理学会が第2回安全保障部会=

 日本危機管理学会は2021年3月20日、安全保障研究部会(部会長・下平拓哉常任理事)の2020年度第2回会合「日本のエネルギー課題と変革への道筋」をリモート開催した。

 今回の目的は、日本のエネルギー課題を洗い出し、いかに課題解決のイノベーションを起こすか。わが国のエネルギー事情に精通し、エネルギーシステムを専門とする中川二彦(なかがわ・つぐひこ)岐阜大学教授が講演した。

(出所)中川二彦氏

 中川氏はまず、エネルギー・環境分野の本質的な課題を解説した。すべての国はエネルギーの安全保障と地球環境への対応が求められると指摘。両方が市場経済原理に沿っており、「経済原理を無視したエネルギー問題の解決策は存在しない」と述べた。

 その上で、中川氏は日本の課題について①足元の日本はエネルギー自給率が低く、エネルギー獲得手段を他国に左右されやすい②地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で定められたCO2削減目標の進捗が芳しくない③エネルギーコストの変動に伴い、貿易収支など経済が左右されやすい―などを挙げた。

 こうした中で、日本はどうすべきか。中川氏はインテグレーション(統合化)によって、自国で入手可能なエネルギーの利用効率向上が必要だと強調した。具体策として、自身が現在取り組む「太陽光発電に電気自動車(EV)を組み合わせた研究」の内容を披歴。これが社会実装されれば、再生可能エネルギーの拡大と大幅な省エネを両立できると提唱した。

中川二彦氏

 講演後の意見交換では、「(太陽光発電にEVを組み合わせた)研究は前提条件が変わっても可能か」「EVには関しては、電池の生産・回収などの環境負荷も想定しているか」など質問が相次いだ。

【米村大介】