日本危機管理学会 2025年度 第1回安全保障部会の実施報告

1 日 時

  2025.9.27(土) 10:30-12:30

2 場 所

  国士舘大学 世田谷キャンパス中央図書館 4Fグループスタディ室E

3 発表者

    下平拓哉(社会構想大学院大学) 

  「エコノミック・ステイトクラフトの射程-歴史的意義と今後の展望-」

4 次第

  10:00 参加者、国士舘大学中央図書館入口ロビー集合

  10:30-10:40 開会挨拶:池田 十吾(国士舘大学 名誉教授)

  10:45-11:45 発表者発表

    11:45-12:15 コメント(池田 十吾)及び質疑

    12:15-12:20 閉会挨拶:池田 十吾

5 要旨

 米中貿易摩擦が、現在の世界経済、世界秩序に大きな影響を与えている。2018年3月22日、トランプ米大統領が中国製品に対して追加関税措置を発表したことを皮切りに米中貿易摩擦が始まり、追加関税の応酬が続き、米中貿易摩擦は激化の一途を辿っている。

 特徴的なことは、単なる貿易摩擦の域を超えた、安全保障の問題と経済の問題が密接に絡み合った問題として捉えられるようになってきていることである。そして現在、安全保障と経済という独自の力学を持つ2つの分野が交錯する場として、経済安全保障や地経学、エコノミック・ステイトクラフト(Economic Statecraft)などの議論が活発化してきている。特に、エコノミック・ステイトクラフトは、1980年代中頃の米国において新たな政策論として登場したものであるが、最近の中国やロシアにおいてもエコノミック・ステイトクラフトが多用され始めている。

 日本においても、2020年以降、経済安全保障の観点からの政策提案が活発化し、経済安全保障の下でいくつかの政策が検討、実施されているが、必ずしもその意味するところは明らかではない。

 したがって、本研究発表では、日本の安全保障政策に欠けているエコノミック・ステイトクラフトとはどのようなものであるかを明らかにすることによって、今後の日本の安全保障政策、経済政策に資することを目的とする。そのために、経済安全保障や地経学、エコノミック・ステイトクラフトといった類似の用語を整理しつつ、それらの歴史的経緯を日本、米国、中国を例に分析考察し、最後に日本にとってのエコノミック・ステイトクラフトの展開の可能性について論じた。