当たり前となった「ネット炎上」―近年のトレンドと対応例
=日本危機管理学会が企業危機・サイバー研究部会=
日本危機管理学会は2022年3月26日、企業危機・サイバー研究部会(部会長・大森朝日理事)の2021年度第2回会合をオンライン形式で開いた。(株)電通PRコンサルティングの倉持武悦(くらもち・たけよし)氏が「当たり前となった『ネット炎上』―近年のトレンドと対応例」と題して講演、最近の事例を基にネット炎上が繰り返される背景などについて報告した。
倉持氏はまずネット炎上の定義を示した。「何件に達したら炎上」という具体的な数値的な定義はないないものの、1000件以上のリツイートが発生した場合に「炎上」と呼び、これは「バズり(盛り上げ)」と表裏一体だと指摘。ただし、炎上は企業のレビュテーション(評判)を棄損するだけでなく、PR活動全般の自粛に追い込まれるケースもあり、その影響は計り知れないと警告を発した。
さらに近年、画像や動画などSNSの機能が向上する中、ネット炎上も(「そうなんだろうな」と一般の人に思わせる)信憑性が高くなり、炎上するまでのスピードも格段に速くなった。また、ジェンダーや人種などに対する差別が炎上の元になりやすいと指摘した。
SNSでは、発信者の意図が正しく伝わらない場合がある。①差別的(人種・性別など)②非倫理的(暴力、薬物など)③人気コンテンツ(アイドル、アニメなど)④国家・宗教⑤プライバシー関連(情報漏洩など)といったテーマを含む場合、特に注意が必要だと強調した。
このため、コンテンツを作る前・発信する前には、「冷静な目で判断」(「発信して良いかどうかを検討するプロセスの追加」「客観的な視点を持つ人物のチェック」「危機管理に長けた人物の助言を得る」)が重要だと指摘。さらに発信後も、「ナレッジ蓄積」(「事例の収集と共有」「リスクアイデアの蓄積と共有」)に取り組むよう提唱した。
講演後の質疑応答では、「炎上は10年以上前から起こっているが、未だに続く理由は何か」「日本と比較して欧米では炎上は少ないのか」といった質問が出された。倉持氏は前者について「(炎上に対する日本企業の)リスク意識が低い点」などを挙げた。後者では、「(SNSなどで)匿名を好む日本とは違い、はっきりと物事を言う欧米では炎上は比較的少ない」と述べた。
【芳賀裕理】