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1992年4月1日
我々を取り囲む環境は21世紀に向けて、ますます変化の激しいものとなり、 かつ多くに予期せぬ未知の事柄に遭遇することが避けられない状況となってきている。 とりわけ特定の目的のために意図的な組織活動をしている人々にとっては、 このような今後の環境変化は、極めて厳しい条件をもたらすものといってよい。 それは国家の活動であれ、企業の活動であれ、その他のものであれ、その環境条件の厳しさには変わりがない。

元来、新しい行動を起こそうと企画する人々が、将来の環境変化を予測し、 その変化の中から好機と脅威となる要因をよみとり、事前の対応を考慮した企画を立案することは、当然である。 また、それらの好機と脅威となる要因を最大限に考慮して、 最も効果的でかつ独創的な企画をいかにして立案するかは、 経営学の分野においても最も重要な課題のひとつとして扱われてきた。

しかしながら、今日から21世紀に向けて予測される環境変化には、 これまで我々が永年にわたって蓄積してきたマネジメントの知識や経験、 洞察力や判断力だけでは理解し対応できない新しい未知のものがあまりに多すぎる。
それは、第一に経済活動の国際化、地球規模的拡大であり、 第二には組織間の国際的な相互依存関係の複雑化であり、 第三には情報通信技術の革新的な進展による世界的な規模による情報の即時共有化である。

このような新しい環境変化の中から発生するリスクには、突発的にあるいは予測不可能なものが多く、 さらには自己と無関係な、あるいは極めて遠い関係にあるものと認識していた事象によって、 自らが根底から覆されるほどの打撃を受けることもありうる。 これらのリスクには、企業レベルを超えた国家レベルの対応が必要となってくるのであろう。 最近では、これを危機管理(クライシス・マネジメント)とよんでおり、 具体的には政治的、経済的、国家的、科学技術的、自然環境的環境領域でのクライシスがあり、 カントリー・リスク、海外進出企業の完全現地化、通商摩擦、企業犯罪、製造物責任、自然災害、 地球環境保護などの諸々の問題が含まれる。

ところで、このようなクライシス・マネジメントのあり方や方法論について体系的な研究はまだ少なく、 起こりうるクライシスに対して実務的に対応できる学識経験者や専門研究者も極めて少ないのが現状であって、 クライシス・マネジメントの理論体系の確立と実務的技法の普及 ならびに専門家の育成は現代の大きな課題である。

我々は、このような時代の要請に応えるため、 「日本危機管理学会」を設立することとし、クライシスを多面的視野から科学的マネジメントするために、 単に研究者ばかりでなく、ひろく産業界、官界が共同して研究を推進し、 その研究成果を積極的に社会に公表し、役立たせていきたいものと考えている。



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